令和4年9月号会報「東基連」編集後記

19世紀の海洋画家イヴァン・アイヴァゾフスキーの作品、「第9の怒涛」。縦221㎝、横322㎝の大きさのこの油彩画に魅了されている人は多い。
画題は、荒れ狂う夜の嵐の海で襲いかかって来る巨大な波。第1の波から第2、第3と次第に大きくなり、中でも9番目の波が最も破壊的で最高潮に達し、その試練を乗り越えると天の助けがあると言い伝えられていると。この絵には、難破した船の木片にしがみ付く人々と、迫り来る第9の波が描かれている。
幾度となく感染拡大を繰り返す新型コロナウイルス感染症との戦いも2年半を超え、感染拡大の波は前回を大きく超えながら第7波を数えた。
今月号の「労務・安全衛生深掘り探訪記」と「ちょこっと用語」では、「新型コロナウイルス感染症と労災補償給付」。そして「罹患後症状」と呼ばれる、回復したにも係わらず「疲労感・倦怠感」などが生じる症状について考えた。
各職場においては、一定の新型コロナウイルス感染症対策が確立されているであろう。それを踏まえながら、一人ひとりを大切にした対応をお願いしたい。特に「罹患後症状」で悩んでいる人には、医療機関、地方自治体、そして労働基準監督署等の相談窓口へのアドバイスを。
「第9の怒涛」には、木片にしがみ付き励まし合う6人が描かれている。そのうちの一人は今にも波間に沈む寸前にあり、それを別の一人が懸命に引き上げ、そして画面中央には、夜の嵐の海に勝利した者に昇る太陽が。
国連は、SDGsで「誰一人置き去りにしない」との理念を掲げた。新型コロナウイルス感染症との戦いは、まだまだ続くのかもしれない。そこで大切なことの一つは、「誰一人置き去りにしない」との強い思いに支えられた、周囲の人々への励ましであるように思えてならない。 
小太郎