ある建設会社の安全衛生担当者から、防波堤の設置について教えて頂いた。現在は堤体にケーソン(コンクリート製又は鋼製の箱型構造物)を採用した防波堤が一般的になっていると。ケーソンの製作・進水方式は数種類あるが、例えば東京の離島の場合、東京湾の桟橋に浮ドックを接岸させ、その浮ドックの中でケーソンを製作。完成後、浮ドックを沈めケーソンを海面に浮かべ、その状態で湾内に仮係留。穏やかな天候の日を選び、引船で曳航し東京湾から太平洋に出て御蔵島、八丈島などの島に向かう。煌めく大海原を進む船。写真や図面を示されながらの説明に引き込まれ、心は東京湾から外洋に飛んだ。
一方、防波堤を設置する予定地では、基礎捨石と呼ばれる1個の重量が100~200㎏にも及ぶ丸い石を投入。海底に潜った幾人もの潜水士が、数百個の基礎捨石を人力で平らに均していく。到着したケーソンはそこに沈められ、砂や割石などの中詰材を投入し海底に固定。ケーソンの上部にコンクリートを打設し、これを幾つも並べて防波堤を完成させると。ここで現場での苦労話をとお訊きしたが、担当の方は困ったように微笑まれ口をつぐまれた。
業界団体は災害事例集(※)を編んでいる。「鋼管を水中切断中、可燃性ガスに引火し爆発」。「係留ロープが外れ作業員に激突」。「基礎捨石均し作業に当たった潜水士が潜水病を発症」。過去の被災事例を真摯に受け止め、今後の防止対策に活用と。
厳寒の2月を迎えた。あの時、苦労話をとのお願いに、困ったように微笑まれた担当の方の姿が浮かぶ。どんな仕事にも、言葉で表現できない、筆舌に尽くせぬ労苦がある。そして、その労苦が社会を支えている。ある企業は「歩んだ軌跡が未来(あした)をつくる」とのメッセージを発信している。この言葉をお借りすれば、働く私達一人ひとりの軌跡が、次の社会を、未来をつくっていく。厳寒の2月。ご安全に!
(小太郎)№49
※(一社)日本建設業連合会編「海洋工事災害事例集」



























