令和7年8月号会報「東基連」編集後記

北関東の丸沼高原。標高1,400mを超える場所に小さな湖があります。周囲を白樺やナラの原生林に囲まれ、熊笹を掻き分けながら進むと、突然、視界にエメラルドグリーンに輝く湖面が。濃緑の樹木が水面(みなも)に映り込み、その美しさからは目を離すことができません。盛夏でも25度を超えることはなく、緑陰には一人で本を読む人影も。静寂の中、吹く風に青葉騒。秘密にしておきたいほどの天地です。
湖畔には温泉に恵まれた一軒宿があり、東京などの小学校が移動教室に。夜には、皆で力を合わせて準備したキャンプファイヤー。暗闇の中、背丈の倍ほどに燃え上がる炎に大きな歓声が。子供達はクラスメイトと協力し共に過ごす体験の中から、幾つものことを学んでいくのでしょう。
アメリカの教育者ジョン・デューイは、提唱する「教育の三原則」の第一に「異なるバックボーンを持つ子供たちが一緒に学び遊ぶことで、人間としての共通の理念や生きざまを学ぶこと」を挙げています。ある人はこの点について「異なる背景を持つ子供たちが『同じ仲間なんだ』という意識を育み、『共に生きる感覚』を養うことこそが教育の目的」と。更に「生きるためには『支えあい』が不可欠。教えるべきことは、他者への親近感、思いやり、相互理解や寛容性である。」と。
教育の場と労働現場では、求める成果もその様態も違います。しかし、異なるバックボーンを持つ仲間達と一緒に取り組むという姿は似ているようにも感じます。支えあい、思いやりを持ち、相互理解を深める関係。それらが織りなされる職場でありたいと願うのは、私だけではないでしょう。
さあ、この夏。あなただけの秘密の天地に出かけませんか。吹き渡る風は涼やかで、どこまでも優しく心身を包みます。
(小太郎)