令和2年11月号会報「東基連」 休憩室

「一泊二日の小旅行」
職業も年齢もバラバラの、気の置けない地元の仲間達8人組。この8人で、年に2回、一泊二日の小旅行を楽しむようになって、もう13年になります。
温泉で日頃の疲れを癒そう!との、至極真っ当な思い付きで始まったこの小旅行。
青葉の季節の5月~6月、紅葉の10月~11月に関東近県の温泉地を巡ります。
行き先は、数か月ほど前に「企画会議」と称する懇親会を開き、そこで各自が行きたい場所をプレゼンテーション。議論の末、挙手で採決し決定します。

小諸城址と懐古園に遊び、ランプの宿で名高い長野県の雲上絶景宿「高峰温泉」に。
東洋のナイアガラと謳われる「吹割の滝」の水しぶきを浴びて向かった、群馬県の「老神温泉」。
同じく群馬県の、渓流沿いに点在する大きな露天風呂と混浴で知られる、秘湯「宝川温泉」。
こんな思い出を、幾つも刻んで来ました。
そんなある年の、春の企画会議。一人のメンバーが「北アルプスの乗鞍岳に登頂しよ
う。標高たったの3026mだ」と提案。酔った輩(やから)の「いいね!いいね!」の無責任な大合唱。
「冗談ではない。自慢ではないが、私の登山歴は八王子市の高尾山をケーブルカーで登ったきりだ。そもそも、少々太めのこの身体で、標高3026mを登れる訳がないだろう」と反論するも、「いいね!いいね!行こう!行こう!」の声に掻き消され、乗鞍岳登頂が決定しました。

乗鞍エコーラインをバスで進み、畳平(標高2702m)に。ここから乗鞍岳の主峰「剣が峰」を目指します。
まずは緩やかな坂道。右手にはコバルトブルーに煌めく権現池と純白の雪渓の美しさ。
暫く歩むと「肩の小屋」。ここからは主峰「剣が峰」の雄姿が仰げますが、いよいよ勾配がきつくなり、私的には「ちょっともう無理」という感じ。20歩登っては休憩。10歩進んではまた休憩。そんな私の横を小学生達が追い抜いて行きます。前後に付き添う仲間たちからは「頑張れ!小学生に負けるな!」との温かい声援。
尾根道に差し掛かり、頂上まではもう少し。汗だくだくになりながら、剣が峰の山頂に到着。遮るものが何もない絶景。感動、また感動。
畳平に降り、宿泊した「銀嶺荘」で飲んだビールの旨さと、満点の星空。いやー、凄かった。

ある年の秋。「秘湯中の秘湯、三斗小屋温泉に行こう!」とのプレゼン。「温泉いい
ね」と賛成する私。しかし、話を聞くと、ちょっと違う。
三斗小屋温泉は、栃木県那須塩原市にある温泉。しかし、車では行けず、行く方法は徒歩のみ。しかも、那須連山の主峰「茶臼岳」(別称「那須岳」標高1915m)の山頂を越えていくルート。
採決の結果、賛成多数で「茶臼岳を越えて三斗小屋温泉」に決定しました。(はあ~)

茶臼岳9合目にあたる那須ロープウエイの山頂駅で降り、まず茶臼岳山頂を目指します。火山礫の大小の岩石が散乱する険しい登り道。風が強い。懸命に足を運び、間もなく山頂というところまで来ましたが、どんどん風が強くなり、立っていられないほどの強風。
そこへ10名ほどの先行したパーティーが戻ってきました。話を聞くと「この先はもっと風が強く、強風で通れないので断念する」と。協議の末、私達も撤退を決めました。
仲間達は口々に「残念だ。次回、リベンジだ」と。私も「そうだね。次だね」と言いつつ、内心「良かった。助かった。次回はない」。
その夜は、急遽、探した「北温泉旅館」に宿泊。映画「テルマエ・ロマエ」のロケ地
となった、こちらも秘湯中の秘湯。大きな天狗の面が飾られた湯船で、まったり。

この小旅行の白眉は、福井県三国港の民宿での「越前がに(ズワイガニ)フルコース」。
ある年、企画会議で「蟹を食べたい」との意見が。これに対し「福井県三国漁港で、凄い越前がに料理を食べさせる民宿がある」との緊急動議。
「いやいや、そもそも在来線と路線バスを乗り継いで費用を掛けないのが、この会の本旨。福井県までは行けないよ」との反対意見に対し、「早割、早期予約割引制度がある。3か月前に予約すれば航空運賃は半額だ」と。
採決を取るまでもなく、「いいね!いいね!行こう!行こう!」の大合唱。

一路、羽田空港から小松空港へ。「永平寺」で蕎麦を食し、「福井県立恐竜博物館」で恐竜と戯れ、いよいよ蟹の民宿へ。
決して新しいとは言えない木造2階建ての小さなお宿の、知る人ぞ知る「蟹宴席」。
まず、先付けに続いて、豪華な地魚のお刺身と酢の物、唐揚げ、天婦羅。そして、続々
と、蟹刺し、焼き蟹、蟹の天婦羅、セイコ蟹が運ばれてきます。「カニ、美味い!」と言
いながらかぶりつく。「うーん美味しい。」この時点で、ほぼ満腹。
そこへ、越前がにの証、黄色いタグの付いた熱々の大きな茹で蟹が登場。「一人一匹です」と女将さん。見たことが無いほどの大きなズワイガニ。「おお!」と言いながら蟹バサミとカニスプーン&フォークで食べ始める。「美味い!。でもお腹がいっぱい。苦しい」。
女将さん曰く「このあと蟹鍋でーす!」と。
人生で、最も蟹を食べた夜でした。
一人では、また家族だけでも、なかなか行けない場所ばかりでした。仲間達に感謝です。
そして、思い返せば、この小旅行は、次への活力を引き出す源となっていたように感じます。
たった「一泊二日」という短い時間の小旅行ですが、日常と異なる場所に身を置き、非日常の時間を過ごすことは、心と身体に不思議な刺激を与えるようです。
その刺激は、心身を活性化させ、次に立ち向かうエネルギーを湧かせるような。
だからこそ、「一泊二日の小旅行」から半年が過ぎると、活力を引き出す不思議な刺激を与えてくれる非日常の時空間への欲求が高まり、次の小旅行の企画会議が招集され、「行こう!行こう!」の大合唱に。

さて、「GoToトラベルキャンペーン」に東京発着コースと東京在住者が加えられ、1か月が経ちました。
また、当社としましては、法改正された年次有給休暇5日間取得という課題もあります。
心身を活性化させ、次へのエネルギーを湧き立たせる非日常の時空間への跳躍に、この「GoToトラベルキャンペーン」と「年次有給休暇」は、格好のアイテムのように思えてなりません。

まもなく「11月6日」を迎えます。
ご存知の方も多いと思いますが、11月6日は「ズワイガニ漁の解禁日」です。
さて、少し欲張って、ズワイガニさん達に出会う「一泊二日の小旅行」に出掛けましょうか。
小太郎