令和5年9月号会報「東基連」編集後記


「働き方改革の推進」を冠に掲げた「建設工事関係者連絡会議」が、立川労働基準監督署の主催で7月の末に開催された。今までも、労働災害防止を目的とする「公共工事発注者会議」は行われていた。しかし、今回の会議は「働き方改革の推進」を主眼として実施する東京労働局管内では初の試み。立川署管内の各地方自治体等の21の担当部署から、建設施工業者の長時間労働抑制に繋がる発注者としての好事例が紹介された。国土交通省や東京都からは、デジタル技術を活用した取り組み事例も。
この試みの背景には、2024年問題とも言われる「建設事業」「自動車運転の業務」「医師」の3つの事業・業務への、「時間外労働の上限規制の適用」が来年4月に迫っていることがある。事業者単独の努力で乗り越えられる課題ではないことは、社会的にも広く認知されてきた。労働人口の減少も背景に、長時間労働の抑制には、発注者側の適正な工期・単価等の設定が必須であると。
しかし、事業者、発注者の対応だけで解決できる問題ではない。食料品を始め私達が手にする殆どの物は、物流事業者が運んでいる。運ぶ道路や橋脚等を維持し、修繕しているのは建設事業者である。全ての事象が複雑に絡み合い、支え合っている私達の社会。他者の時間外労働の抑制が自身の痛みに繋がる場合もあり、多くの理解と共感が何よりも必要とされている所以である。
働き方改革関連法が明らかになった時、「過労死等認定基準で示された時間数以上の時間外労働が認められなくなった」と思ったことを覚えている。社会の発展、人々の幸福の為に働く人が、長時間労働で健康を害して良い訳がない。
故事に「胸中(きょうちゅう)に成竹(せいちく)あり」とある。竹の絵を描くには、まず胸中に竹の姿を思い描くこと。適用まで、あと7か月となった。私も長時間労働が抑制された身近な社会を胸中に思い描き、今いるこの場でその絵を描く一人でありたい。
                            
小太郎