令和5年4月号会報「東基連」編集後記


飛花落花の花吹雪。その数日後、桜の樹の下に佇むと、「桜、蘂降る」光景に出会う。「さくら、しべふる」と読む春の季語。桜の花弁が散った後に、蕚が雄蘂雌蘂と共に枝を離れ落下する様を表している。人は、蕚や蘂が降る様子にはなかなか気が付かない。樹の周囲に蕚達が薄い紅色の絨毯を描く姿を見て、桜への思いを新たにする。
この春、4月1日に、当連合会の三多摩地域4支部が運営する「東基連 たま研修センター」(立川市)がオープンした。東の「安全衛生研修センター」(江戸川区)と並び、安衛法に定める技能講習等を実施する西の拠点として、新たな学びの場となる。
作業主任者技能講習の会場で、高齢の受講者と語り合う機会を得た。「資格を持っている奴が突然辞めて、困った社長に頼まれて来たんだ。家でテキストを読んでいたら、小学生の孫娘が『爺じもテスト? 頑張ってね!』と。孫娘と約束した以上、落ちる訳にはいかなくなった」と笑う。「勉学は光であり」とは、古代ギリシャの哲学者ソクラテスの言葉。学問は人生を照らし切り拓く光であり、年齢は関係ない。「学は光」と。
職場には、いぶし銀に輝き、活躍を続けるシニア世代の先輩達が幾人もいる。共通しているのは、学ぶ姿勢を貫いていること。その先輩達や、孫娘に合格を約束した人生の先達に連なり、学ぶ努力を惜しまぬ日々を送りたい。
「東基連 たま研修センター」近くの国営昭和記念公園では、今、「桜、蘂降る」光景が広がっている。紅色の絨毯が春の陽光に輝き、学ぶ受講者生を応援しているかのようだ。
小太郎