令和4年1月号会報「東基連」編集後記

厚生労働省が、外国人労働者に関する新たな統計を整備する検討を始めたという。外国人労働者については、国籍別や在留資格別などの属性別の人数は把握できているが、年齢別、雇用形態別の賃金など労働実態に迫る統計はほぼ整備されていないと。令和3年1月29日に厚生労働省が発表した外国人労働者数は、172万4328人を数える(令和2年10月末時点)。これだけの人が日本国内で就労している以上、
その実態把握は各種支援の政策立案の上からも急務であろう。
当連合会でも「外国人労働者安全管理支援事業」として、外国人労働者を雇用する各企業へのヒアリング調査を行っているが、最も苦労することとして「言葉の壁」を挙げる人が多い。そのような中、企業や地方自治体を始め多くの関係者が、「やさしい日本語」や「多言語」による情報発信に努め、コロナ禍の中でもその努力は継続されている。   
愛知県の「有楽製菓(株)豊橋夢工場」では、全従業員のうち4%を占める英語を使えるフイリッピン国籍等の外国人従業員の理解促進のため、工場内の全ての掲示物、説明文書を日本語と英語の併記とした。共に働く仲間への心強い配慮であろう。
新型コロナウイルス感染症がもたらした影響の一つとして、人と人との関係が希薄になりつつあった社会の繋がりが回復してきたとの意見もある。度重なる災害の経験を経て「社会における共助」、言い換えれば「助け合いは大事だという雰囲気」が強くなってきたのではないかと。
災害の中で、個々の置かれた状況の違いが明らかになり、様々な観点から見た所謂「弱者」が浮き彫りに。かつ誰もがその立場になり得ることが明瞭になった。その中で、「危機の時こそ他者の苦しみに思いを馳せ、何かを成したい」との思いは、社会の成熟度を測る指標でもあろう。
コロナ禍の中で、多くの識者が述べていることに「多様性」と「包摂性」があった。同調を求めるのではなく、多様な他者の可能性を尊重し、引き出していくという発想。コロナ禍など幾つもの災害を経て、安定し成熟した社会へと向かう道程には、個人としても、組織としても、他者を思いやり、多様性を尊重する姿勢が求められよう。
外国人の在留資格のうち長期の在留が可能となる「特定技能2号」について、政府が受け入れ拡大に向けて検討していることが明らかになった。そんな中、日本に住む外国人の困りごとを解決するサービスを展開する新規事業のスタートが、相次いでいるという。「お部屋探し」「生活相談」「就職サポート」等、いずれも多言語、オンライン対応が特徴。外国人労働者のみならず、「誰一人取り残さない」多様性と包摂性のある社会への現れであろうか。
1月の別名は「睦月(むつき)」。ある説では「睦び月(むすびつき)」が「睦月」に転じたと。「睦び月」とは、人々が集い仲睦まじくお正月の宴を行うことが由来とか。一年のスタートにあたり、一人ひとりを大切にする「多様性と包摂性」の在り方を、自身に問い掛け、考える「睦月」としたい。
小太郎