鳥甲山(とりかぶとやま)の東側の切れ落ちる絶壁。「第二の谷川岳」とも称されるこの絶壁を仰いだ時、その荘厳さに息を飲んだ。鳥甲山が聳える長野県栄村から新潟県津南町にまたがる中津川沿いの一帯は、「秘境・秋山郷(あきやまごう)」と呼ばれる紅葉の名所。旧友たちと連れ立って訪れた10月の下旬。津南町から栄村を経由し奥志賀に抜ける林道は、視界の全てが燃えるような紅葉に包まれていた。年に2回の旧友たちとの旅も17年目。回を重ねた分、年齢も重ねた。旅の話題の多くが、それぞれの持病の話に。齢を取るほど具合が悪い箇所が増えるのも、これもまた致し方ないことか。
都産健協の「定期健診・年齢別有所見率」調査によれば、年齢が上がるほど有所見率は高くなる傾向にある。例えば男性は、35~39歳68.1%、40~44歳73.5%、50~54歳80.2%。このデータを見ると、有所見率の高さに改めて驚かされる。有所見率が高い以上、再検査、精密検査を求められる人も多いに違いない。
健診結果を踏まえた法定の「医師等の意見聴取」等の実施は大切。その上で、「再検査又は精密検査を行う必要のある労働者に対して、検査受診を勧奨する」こともまた、事業者は求められている(「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」)。
9月の「職場の健康診断実施強化月間」を皮切りに定期健診を進めてきた企業も多く、要再検査等の対象者の把握も始まっていよう。早期発見が早期の治療に繋がる。衛生管理者を始めとする産業保健スタッフの受診勧奨の取り組みが、命を救う契機となった事例は数多い。
多発性骨髄腫を発症し、働きながら数年にわたり治療を続けてきた大学の同期生。先日、「主治医から寛解を告げられた」との連絡が。油断は出来ないが、彼の病気との闘いを思い返し喜びあった。さて、鳥甲山の絶壁を共に見上げた旧友たち。この旅を続けるためにも、彼らに、再検査等の受診を強く勧めることとしよう。「先ずは小太郎だろう!」と言われるのは間違いないが。
(小太郎)