一度だけ、父の職場を訪れたことがある。火力発電所の発電用ボイラ設備を施工する専門工事会社。その会社で現場監督を務めていた父。国内各地のみならず、インドや中東諸国の工事現場にも赴いていた。単身赴任での長期出張を繰り返していた父から、「現場を見に来ないか」との話があったのは高校1年生の冬。冬休みを利用し、2歳違いの弟と一緒に九州地方の火力発電所新築工事現場に。
保護帽と安全帯を着用し、父と作業員の人達と共に工事用エレベーターで一気に最上部まで。事前に許可を得て、安全な見学者用のルートを通ったのであろうが、高所に組まれた足場と金属メッシュ製の床。強風が吹き抜ける作業現場。覗き見る地面は遥か下にあり、怖さのあまり手すりを離すことは出来なかった。そんな中、傍らに立つ父は指示を出し、作業員の人達は仕事を進める。心底、「この人達は凄い!」と思った。
大手ゼネコンの一つである清水建設株式会社は、「子どもたちに誇れるしごとを。」とのコーポレートメッセージを掲げている。このメッセージには「人々がいつまでも幸せであるような空間を創出していく」、そして「次の世代の人々に責任ある事業を推進していく」との決意と意思が込められていると。
一度だけ訪れた父の職場。そこで学んだのは、どんな仕事も他者の幸福に繋がっているということ。その後、労働安全衛生の傍らに立つ業務に就き、様々な労働現場を訪れてきた。出会う人達は、誰もが懸命に真剣に「しごと」と向き合っていた。その姿は、先に紹介した「子どもたちに誇れるしごとを。」に相通じるように思えてならない。
12月に入った。大変な一年であった方もおられると思う。大変であった分、誇れる仕事の輝きは増す。その労苦に感謝の意を伝え、新しい年を迎えたい。
(小太郎)