令和7年4月号会報「東基連」編集後記

甲府盆地の南。笛吹川河畔の小さな花火店。玩具(おもちゃ)花火とも呼ばれる線香花火などを扱い、その種類は500品目を超える。幼児でも手に持ち楽しめる安全な玩具(おもちゃ)花火への拘りは評判を呼び、NHKの「ドキュメント72時間」等でも取り上げられ、一年を通し全国からお客様が。夏には来店者が一日600人を超え、花火を選ぶ親子の歓声で賑わう。
同期同窓の友人でもある店主は、こんなエピソードを。「お子様と一緒にシングルマザーの方も多く来店。『子供に夏休みの思い出を作ってあげたい』と」。また、「外国人労働者を雇用する企業の担当者。『母国を離れている彼ら。少しでも癒したい』」。そして、「高齢者入居施設の職員の方は『毎年行う施設の花火大会。入居者の皆さんは嬉しそうに線香花火を手に持ち、子供に返ったように笑顔いっぱい。その後に亡くなられ、花火はその日が最後となる人もおられます。だから、全員に喜んで貰えるように』と」。
先月、東基連・中央支部が「女性活躍推進セミナー2025」を開催。講師の一人が次のように語った。「社会は、多様な属性を持つ人々から構成されている。これからの社会は、多様な属性を持つ個々人を尊重しているか。その能力を十分に発揮できる環境であるか。この点が問われる時代に入っている」と。先の店主の話からも、多様な属性を持つ個人を大切にする社会に向け、多くの人々が尽力している動きが窺える。
 店主は更に語る。「毎年3月に福島県南相馬市から来られ、沢山の花火を購入される女性。『震災でみんな亡くなってしまった。だから、浜で、一人ひとりに、線香花火を見せてあげるの』。生死を超えて他者に寄り添う彼女の姿に、心打たれた」と。
春、四月。暖かさが満ち始めた今宵。線香花火に火を付けてみよう。煌めく花火の美しさは、四季を問わない。
                     
(小太郎)
※写真は、「はなびかん」ホームページから。