奥日光に続く金精峠に向かう国道120号。吹割の滝を過ぎ、尾瀬ヶ原で名高い片品村に入り、「奥利根ゆけむり街道」との愛称を持つ県道に。暫くすると「天王桜」との案内標識。ここを右折し長閑な山里を進むと、オオヤマザクラでは国内最大級と謳われる一本桜「針山の天王桜」が見えてくる。草木が綺麗に狩り払われた農地の中央。樹齢300年、樹高14mに迫る大桜は、四月下旬から五月上旬に満開を迎える。
この樹の根元には、「天王様」と呼ばれる石造りの小さな祠が。祠には「文化十五年五月吉日 千明勇右ェ門」と刻まれている。西暦では1818年。当時既に樹齢100年との言い伝えもあり、今に続く千明(ちぎら)家が守り伝えてきた300年間。咲き誇る桜の大樹のもとで、人々が楽しい語らいの場を持つ光景が浮かんでくる。
大変な時、どうしようもなくなった時、話を聞いてもらえる場所があるだけで、人は頑張れるという。振り返ってみれば、その通りと頷ける記憶が幾つも蘇る。「楽しいところ、明るいところに人は集まる」とも。人々が語り合った天王桜のように、1日の多くの時間を過ごす職場こそ、元気と勇気が湧いてくる場所であって欲しい。
そのヒントが、東京労働局のホームページに掲載されている「東京の労働行政 Profile2025」にある。労働基準行政は「健康で安心して働ける職場」、雇用環境・均等行政は「誰もがその能力を十分に発揮」、職業安定・人材開発行政は「労働者等の特性に応じた雇用の安定・促進」にそれぞれ取り組むと。
この5月から「東基連 労務・安全衛生管理連続セミナー」が始まる。初回のテーマは「令和7年度『行政運営方針』を読み解く」(5月30日開催)。行政運営方針に示された労働行政の施策を活用し、更に安心して働ける職場づくりの一助としていただきたい。
陽光輝く五月。武尊山の麓。天王桜の傍らに、数え切れぬほどの水芭蕉が白い仏炎苞を開く。白い苞を掲げる水芭蕉達は、楽しい語らいに興じているようだ。
小太郎