熱中症の危険度を表すWBGT値。その値が31℃を超えると予想された日の朝礼。安全衛生スタッフが「今日の巡視では、アイスクリームを配ります」と。作業員達からは「おおー!」との歓声が。(株)竹中工務店・東京本店の担当者から教えて頂いたエピソード。この熱中症防止への取組は、本号と来月号の「労務・安全衛生深掘り探訪記」で詳しく紹介するが、担当者は「出来ることは何でも行います」と。そして「作業員を始め多くの人々から様々なアイデアが。熱中症防止に向けお祭り状態です」とも。
東京の熱中症を原因とする死亡・休業4日以上の労働災害は右肩上がりで増加。令和3年に44件であったものが、令和6年は106件に(死亡災害4件)。東京労働局健康課では「STOP! 熱中症クールワークキャンペーン」を5月1日から開始。熱中症対策の強化を定めた改正安衛則の6月1日からの施行も踏まえ、死亡・重篤災害の防止のために、「暑さ指数の把握と評価」等、重点対策の徹底を呼び掛けている。
私が労働基準行政に入職し、初めて担当した災害調査は感電災害だった。被災者が握っていた2メートルほどの長さの金属製のパイプ。そこに残された左右の掌(てのひら)の痕跡を撮影し、その位置をメジャーで測定した。労働とは、労働災害とは、人の生死に直結していることを教えられた。決して起こしてはならないと、強く思った。
「安全文化」とは、「安全を重要と考える組織文化」と言われている。安全衛生に関する取組の中で、誰もが自社の「組織文化」を構築している。その根底にあるものは、仲間の命を守るとの思いであろう。先の担当者は「熱中症災害は、対策を講じれば講じるほど減少します。昨年の弊社の工事現場での熱中症災害発生件数は、殆どが不休災害ですが、全国で27件です」と。ここにも確かな「組織文化」がある。
全国安全週間準備期間が6月1日からスタート。本年度のスローガンは「多様な仲
間と 築く安全 未来の職場」。多様な仲間の命を守る夏が、始まった。
小太郎